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最高裁判所第二小法廷 平成8年(オ)1640号 判決

東京都北区中十条三丁目三番一七号

上告人

株式会社石山製作所

右代表者代表取締役

石山舎人

同所

上告人

石山舎人

右両名訴訟代理人弁護士

遠藤安夫

東京都新宿区大京町二二番地の五

被上告人

アキレス株式会社

右代表者代表取締役

鈴木悌次

右訴訟代理人弁護士

安原正之

佐藤治隆

小林郁夫

右当事者間の東京高等裁判所平成七年(ネ)第二二二九号不正競争行為差止請求事件について、同裁判所が平成八年四月三〇日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人遠藤安夫の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断及び措置は、原判決挙示の証拠関係及び記録に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原審の裁量に属する審理上の措置の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田博)

(平成八年(オ)第一六四〇号 上告人 株式会社石山製作所 外一名)

上告代理人遠藤安夫の上告理由

第一 原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな重要な事項について理由不備の違法がある。

(原判決の認定)

一 原判決は「乙第七号証の2、検甲第一号証乃至検甲第四号証並びに原告製品一、三乃至五において接着剤の上に位置して用いられている化粧用粘着テープは『粘着テープ』であって、これの貼付自体に接着剤の接着力が必要とされているわけではないうえ、これに貼付するに際しては、被貼着面が安定した状態にあることが好ましく、接着剤に流動性があると化粧用粘着テープがずれたり、接着剤がはみ出したりして不良品を生じるおそれがあると考えられることを総合すると、被控訴人が『アキレスノンスパーク』という商品名で製造、販売している自己放電式除電器の大部分を占める原告製品一乃至五のうち、原告製品一及び二は原判決添付の別紙物件目録一及び二の各二の(1)乃至(5)に記載の製造工程を原告製品三乃至五は同目録三乃至五の各(1)乃至(6)に記載の製造工程をそれぞれ経て製造されるもので、いずれも右各二の(3)の工程で塗布乃至再活性化された接着剤を乾燥、固化させてから、その後の化粧用粘着テープを貼りつけたり、カセットでかしめたりする右各二の(4)以降の工程に移るものであること、右(3)の工程を経た後の接着剤は加圧しても多少の変形が生じる程度の柔軟性はあるが、これを外部から加圧した場合、流動して除電繊維群に浸透するほどの流動性は失っているものと認められる(原判決二丁一一行から三丁六行)。

(被上告人主張の物件目録一乃至五)

二 被上告人は第一審判決書添付の別紙物件目録一乃至五は訴状請求の原因において原告製品の製造工程を明らかにするものとして訴状に添付したものである(本書末尾にも添付する。以下別紙物件目録という)。別紙物件目録一乃至五の各二の(3)には、いずれも「配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて、電極固定用粘着テープ2とを固着する。一本の糸状化した電極1を使用する場合は、接着剤3を塗布、乾燥、固化させて、電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。」(4)には「接着剤3が固化した後、接着剤3の上から電極固定用粘着テープ2と同幅かやや幅広の化粧用粘着テープ5を貼り付ける」と記載し、その製造工程において電極固定用粘着テープ2と電極1の上から接着剤3を塗布してから、これが乾燥、固化させて電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着つまり『かたくくっつける』迄の間に、電極固定用粘着テープ2と化粧用粘着テープ5との間にいれてある電極1及び接着剤3を化粧用粘着テープの外面から加圧する工程がないのである。

(理由不備)

三 原判決が原告製品は別紙物件目録の製造工程によって製造されたものであると認定した次の諸点に理由不備がある。

(理由不備その一)

(一) 圧力の適用はあらゆる接着作業に必要とされる基本的操作のひとつで接着剤を適用し、貼り合わせられた接合物は直ちに加圧を受けなければならない。加圧の目的は、接着面の緊密な接触を得ることにある。圧力の大きさによって接着剤層の厚さが、接着剤層の厚さによって接着の強さが支配されるため圧力の管理に手抜きがあってはならないのである(乙第六号証今藤純の陳述書)。

接着剤による接着には加圧の適用はあらゆる接着作業に必要な基本作のひとつであり、この種業界における公知の事実である。

被上告人は別紙物件目録の製造工程中、接着作業において加圧の適用がないと主張し、上告人は加圧が必須の条件であると反論し大きな争点となっていたのであるから、原判決は上告人の主張に耳を傾けて、圧力を適用しなくとも接着ができることを認定するにはその特別な事情を明らかにしなければならないのに、これをしなかった原判決には理由不備の違法がある。

そして、もし接着剤が固化する以前に圧力の適用があるのであるならば、仮りに原判決がいう本件特許が製法特許であったとしても原告製品の大半が本件特許の技術的範囲に属することになるのであるから右理由不備は判決に影響を及ぼすべき重要なる事項に関するものであると云うことができる。

(理由不備その二)

(二) 原判決は乙第七号証の2(アキレス株式会社プロスト工場長作成のアキレスノンスパーク製造説明補充書等によって「原告製品一、三乃至五において接着剤の上に位置して用いられる化粧用粘着テープは「粘着テープ」であって、これの貼付自体に接着剤の接着力が必要とされているわけでないうえ、これを貼付するに際しては、被貼着面が安定した状態にあることが好ましく接着剤に流動性があると化粧用粘着テープがずれたり、接着剤がはみ出したりして不良品を生じるおそれがあると考えられることを総合すると--中略--いずれも右各二の(3)の工程で塗布乃至再活性化された接着剤を乾燥、固化させてからその後の化粧用粘着テープを貼りつけたり、カセットでかしめたりする右各二の(4)以降の工程に移る」と認定する。

ところで、右乙第七号証の2等によると原告製品の中間製品である検甲第一号証等はドラム上で右各二の(1)乃至(3)の工程作業を行う。つまり塗布乃至再活性化された接着剤を乾燥、固化させて電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着するまでかなりの時間が必要なのである。

原判決はこの点につき、「被控訴人が主張する製造工程において接着剤が浸透、固化するまで放置するというのは時間を空費し、かつ十分な接着機能を接着剤に与えないもので、実用性がない旨の控訴人らの主張に添う乙第七号証の一、乙第一一号証の記載部分は採用できない」と説示する(原判決六丁六行から一〇行)。

しかし、被上告人主張の接着剤による接着に圧力を適用しないのであるから接着機能を接着剤に与えないことは吾人の経験則上当然のことであること、ドラムに原反を取り付け接着剤の塗布、乾燥、固化には四時間要したことは否定できない事実であり、そのことはこの種業においては公知の事実である。

乙第七号証の一は右二個の事象から帰納される部分及び乙第七号証の2が明らかにする手作業の点などから作業効率とこれに要する時間等を実験により確定し各種の数字を推計したものであって、被上告人はこれに反論できなかったのである。

にもかかわらず、原判決はこの種業界では公知の事実である事項の記載について単に「・・・記載部分は採用できない」と云ってこの部分の証拠を理由を付けずに切り捨てることは自由心証主義の限界を踏みはずす理由不備の違法があり、しかも、これは別紙物件目録の製法が実用性があるか否かにかかる判決に影響を及ぼすことが明らかな事項に関するものである

(理由不備その三-原告の中間製品検甲第二・三号証-)

(三) 原判決は「検甲第三号証及び検甲第三号証の剥離された除電繊維群を顕微鏡で拡大撮影した甲第一二号証によれば、剥離した除電繊維群の背面には、接着剤が薄い層となって存在していることが認められた」と認定している(六丁頁二〇行から二二行)。

しかしながら、右認定には判決に影響を及ぼす明白なる理由不備がある。

すなわち、原判決は「顕微鏡で拡大撮影した写真」というが、それは被上告人の証拠説明を鵜呑にした明白なる不合理性がある。

つまり「顕微鏡は微小物体を拡大して見る装置で倍率は百倍から二千倍程度」である。この顕微鏡で撮影した写真は微小物体の極小範囲の拡大であるため、写真は非常に微小範囲しか写出しない。甲第一二号証の現物である中間製品の電極固定用テープの巾は約一〇ミリメートルである。この電極固定用テープ巾が甲第一二号証の添付写真においては約六〇ミリメートルになっており、約六倍に拡大しているにすぎない。

このように倍率が小さく、かつ甲第一二号証の写真のように被写体の画面が広範囲な写真は顕微鏡では撮影することは不可能であることは公知の事実である。

原判決にこのような非科学的な被上告人の主張を真に受けて証拠とし採用し、しかも、「甲第一二号証によれば剥離した除電繊維群の背面には接着剤が薄い層となって存在していることが認められ」と認定しているのである。

その理由は多分、当時原告の平成六年七月二一日付準備書面(八)の七頁五行目に「検甲第三号証の電極固定用テープから剥した除電繊維群の裏面(テープ面に直接接していた面)に光沢が視認される。これはごく薄く接着剤が浸透していたことを示すものであるが石山には見えないようである」との記載によっているものと思われる。

しかし、ごく薄い接着剤が浸透していようが、いまいが、接着剤があろうが、なかろうが、光沢の発生には無関係であることは光学の極めて初歩的な原理である。

原告が平成六年一一月三〇日に提出した甲第一二号証を複写した写真(平成八年三月一八日付当時被告の準備書面に添付した甲第一二号証の写真)をよく見ると、原告が薄い接着剤があるため光沢が視認されるというところの写真の除電繊維群間に黄色の接着剤層のある、この下部の左側1に光沢が視認されている。又黄色の接着剤層より離れた上部になるところ(ここには接着剤層があると除電効果を大きく阻害するので皆無なところ)の除電繊維群自体の部分2にも光沢が視認している。被上告人の光沢があるから薄い接着剤層があるという主張は非科学的・非理論的である。

かえって、この部分には接着剤の付着は認められないのである。

原判決は更に「これによれば検甲第三号証の右剥離部分は除電繊維群と電極固定用粘着テープとの間に接着剤が浸透していたところ、除電繊維群を電極固定用粘着テープから剥離した際、右の浸透していた接着剤が除電繊維群に付着したまま、電極固定用粘着テープから剥されたものと認められるから控訴人らの右主張は採用できない。」として上告人の主張を排斥した。

しかしながら、甲第一二号証により除電繊維群と電極固定用テープとの間に薄い接着剤があるという証拠は成り立ない。又アキレスノンスパーク製造説明の物件目録一乃至五の製造工程(3)による除電繊維群と電極固定用テープの両者を固すると主張さている製造工程を原判決で認めておきながら、電極固定用テープと除電繊維群とがいとも簡単に剥離されたことに対し原判決は言及を避けている。

これを要するに、原判決は被上告人の証拠説明を鵜呑にし顕微鏡写真でないものを、そのように錯覚し普通の写真より精度が高いものとの過った前提で光学的でないものな光学的と誤信して写真の光沢の部分に接着剤が存在するとの思考らしい。

原判決は上告人提出の原告製品の断面拡大写真について縷々判断を加えているが、それは右顕微鏡写真的な又は非光学的な目で見聞した結果でありすべて理由不備となっている。

これらは本来写真鑑定又は検証物そのものを鑑定しそれに基づき裁判すべきであったのに上告人の鑑定の申し出を却下して認定した結果、判決理由が極めて不合理かつ不十分で、理由不備の違法がある。

第二 原判決には判決に影響を及ぼすべき事実につき審理不尽の違法がある。

一 上告人は原審において検第一号証の一・同第二号証の一(いずれも原告製品)・検甲第一・二・三号証(原告提出の原告中間製品)について鑑定の申出をした。

立証事項は検乙第一号証の一同第二号証の一については本件特許の技術的範囲に属する製品であること検甲第一ないし三についてはこの中間製品として完成品を作成しても検乙第一号証の一・同第二号証の二と同様な完製品にはならないこと。である。

二 原判決は上告人が提出した原告製品の断面拡大写真の接着剤の状況等につき種々検討し(検討したと云っても被上告人の云う儘)上告人の主張を排斥した。しかし、それはいずれも前記顕微鏡写真の類であり、写真光学を無視した素人の思惑の範囲を出ない代物である。

その結果、接着剤の接着に関し加圧がなく、しかも生産経済性を無視した実用性のないことが明らかな別紙物件目録の原告製品の製造方法を実用性ありと認め、その上原告の完成品が右製造方法によるものであると誤認したのである。

右は事実審の最終裁判所の執るべき審理方法ではない。

右は明らかに判決に影響を及ぼすべき事実につき審理不尽の違法がある。

第三 原判決には判決に影響を及ぼすべき法令解釈適用の誤りがある。

原判決は本件特許を製造方法の特許であり原告製品はその製法によっていないから、本件特許の技術的範囲に属さないと認定する。

しかしこれは特許法の解釈適用を過った結果であり、本件は物の発明の特許である。

その理由を次に述べる。

1 本件特許発明の技術的範囲は特許法第七〇条にある通り明細書の特許請求の範囲記載の「柔性板と金属板との間には除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧したことを特徴とした自己放電式除電器」である。

この文章中「入れて」「加圧して」との「て」の文字は助詞であり過去完了の意味である。

文章中「組立ったこと」との「た」の文字は助動詞であり過去完了の意味である。

「組立」の意味は過去完了の意味で両者共通し「組立ったものの構造」である。

接着剤とは粘着剤、接着剤等いずれでもよく接着効果があって流動性の有無に関係なく、又固体化している接着剤等もあり、これらの接着方法に関係ない。

加圧とは柔性板の面に直接加圧する方法又は他のものを介し柔性板に間接的に加圧すればよく柔性板の外面に加圧力が加わればよい。

2 要するに、本件発明は、柔性のある既製品である柔性板及び既製品である金属板・除電繊維群・接着剤の四つの部材即ち柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤を入れて柔性板の外面より加圧して一つの統一体に組立てたものの構造である。右「・・入れて・・加圧し」には経時的な要素はなく接着剤による組み立てには加圧が必須の要件である通念を明示しているに過ぎない。

原判決はこれを製法特許と解し原告製品は右製造過程によっていないので本件特許の技術的範囲に属さない旨と認定した点に判決に影響を及ぼすべき特許法第七〇条についての解釈解釈適用の誤りがある。

以上いずれの観点からするも原判決は破棄は免れないところである。

尚、上告人石山舎人作成の別紙上告理由補充書の記載を参酌されたい。

以上

別紙

第一 本件特許発明の名称自己放電式除電器について

一 この特許発明は物の発明の特許である。その理由として左記に述べる。

(1)本件特許発明の技術的範囲は特許法第七〇条にある通り明細書の特許請求の範囲記載の「柔性板と金属板との間には除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧したことを特徴とした自己放電式除電器」である。

(2)この文章中「入れて」「加圧して」との「て」の文字は助詞であり過去完了の意味である。

文章中「組立ったこと」との「た」の文字は助動詞であり過去完了の意味である。

(3)「組立」の意味は広辞苑・角川国語中辞典等において過去完了の意味は両者共通し「組立ったものの構造」と記載してある。

二 故に本件特許発明の技術的範囲は文理解釈上「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧したことを特徴とした構造の自己放電式除電器」であり、物の発明である。詳細の説明は後記第四の一に記載してある。

第二 原判決に対し上告人が理由不備としての点

一 上告人の主張に対して、被上告人の実際に製造している製造工程と被上告人が主張しているアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)と相違している点並びに鑑定の申出に対しこれを採用されず、判決の判断から除外されている、その他にっかては後記第四以後に詳記してあるものに対しても判断していない。

(1)被上告人の主張については例えば物件目録一乃至五の製造工程(3)と被上告人が実際製品を製造している製造工程と相違する点や第四以後に詳記してある理論的に説明できない証拠物件にならないもの等を被上告人の主張を無条件で信用し判決の理由として記載されている。その他については第四以後に詳記してある。

(2)本件特許発明は物の発明であるものを判決の一〇頁後欄二行目より四行目に

「本件発明は(柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立った)という製造工程によつて製造される自己放電式除電器であり」と記載し、製造方法の発明であるかのように書き換えた判決文である。

第三 判決においては上告人の実際上理論的に合致している点及び被上告人の主張している製造工程と実際に製品の製造工程とは相違している等について

上告人の主張を除外した判決であり、被上告人の実際上理論的に不合理なもの、又被上告人の主張している物件目録一乃至五の製造工程と同実際に製品を製造する製造工程とは相違しているものをそのまま信用されて被上告人の主張を有利にした判決に対し、あまりにも一方的であり不公平な判決と思われ、これに対し控訴入は納得することができない。

第四 本件特許発明は物の発明である証拠となる理由並びにその他の説明について

一 本件特許発明の技術的範囲は特許法第七〇条により特許公報の明細書の特許請求の範囲の記載してある。

「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立ったことを特徴とした自己放電式除電器」である。

(1)特許法第七〇条、特許発明の技術的範囲

「特許発明の技術的範囲は願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」

これについての趣旨を特許庁編(工業所有権法逐条解説)平成二年一月二〇日改訂九版三刷発行の二〇八頁八行目より一三行目に

[趣旨]

旧法のもとにおいては、特許発明の技術的範囲を定めるにあたっては特許請求の範囲に記載された内容にのみ限定されるという意見と発明の詳細は説明の記載を含めた明細書全体から判断すべきであるという意見があった。後者の意見の最も極端なものは、特許請求の範囲は発明の単なるインデックスにすぎないというものである。この点現行法は特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない旨を明確にしたものである。従って発明の詳細は説明の欄には記載されているが、特許請求の範囲の欄には記載されていないような発明の内容は特許発明の技術的範囲に包含されないのである。

故に本件特許公報の発明の詳細は説明の欄に記載してあるものは本件特許発明の技術的範囲外である。

(2)本件特許発明の技術的範囲は

「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立ったことを特徴とした自己放電式除電器」である。

右文章中の短語の意味について

柔性板とは、材質の種類、大きさ、形状、厚さ等には関係なく、必要な加圧力により柔性度があればよい。

金属板とは材質は金属で種類に関係なく、板状又はこれを曲げたり、色々と加工した形状も含む。

除電繊維群とは除電効果のある金属又は非金属に関係なく繊維のものを二本以上集合したもの。

接着剤とは粘着剤、接着剤等いずれでもよく接着効果があって流動性の有無に関係なく、又接着力がある接着剤等であり、これらの接着方法に関係なく、或いは後日接着し現在は完全に接着力を示さなくなった元の接着剤等で材質や使用量粘性等に関係しないもの。

加圧とは柔性板の面に直接加圧する方法又は他のものを介し柔性板に間接的に加圧すればよく柔性板の外面に加圧力が加わればよい。

(3)本件特許発明の技術的範囲は「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れた構造でありこの構造を解りやすく明確に示したもので国文法上過去完了で記載した構造であり柔性板の外部を加圧して柔性板、除電繊維群、金属板、接着剤等の四者からなる構造の自己放電式除電器そのものの特許発明である。

本件特許発明は物の特許発明である。文章中「入れてのて、加圧してのて等ての字は文法上助詞であり過去完了を意味する。又組立ったのた、特徴としたのた等たの字は文法上助動詞であり過去完了を意味する等すでに完了しているものの構造の自己放電式除電器そのものの特許発明である。

(4)本件特許発明の特許請求の範囲中「組立ったこと」並びに特許異議の決定の理由の記載中の「組立てた点」等両者共通して「た」の文字があり、この文章は過去完了である。

イ組立の意味について、広辞苑第三版発行の六九八頁に

「くみ・たて[組立]〈1〉組立てること。〈2〉組み立でるものの構造。」と記載されている。

ロ角川国語中辞典昭和四八年一二月二〇日初版発行の六〇三頁に

「くみ・たて[組(み)立(て)]〈1〉組み立てること。また組み立てる方法。〈2〉組み立てたものの構造」と記載されている。

右辞典中〈1〉は未然形であり〈2〉は過去完了の意味を示すものであり。

故に本件特許発明は「組立ったこと」「組立てた点」とあるため過去完了であり当然「組み立てたものの構造」である。

(5)もしも特許請求範囲に自己放電式除電器の製造方法として記載するときは文法上製造方法とは、これから自己放電式除電器を製造する方法であり未然形にする例えば左記のように

「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れ柔性板の外面より加圧し組立てることを特徴とする自己放電式除電器の製造方法」と未然形の文章にすることが一般的記載方法であるように、文章中入れてを入れ、加圧してを加圧し、組立ったを組立てる、特徴としたを特徴とする、自己放電式除電器の製造方法と記載して文章を未然形にすることが文法上製造方法となる。

故に本件特許発明の自己放電式除電器は製造方法の発明ではなく、すでに完成した構造の自己放電式除電器でありその物の特許発明であることが国文法上並びに前記辞典等により明白である。

(6)被上告人は本件特許発明の自己放電式除電器は特許請求に範囲の記載によるものにもかかわらずこれを特許法第七〇条に明記してある特許発明の技術的範囲を無視して特許発明の技術的範囲に包含されない、発明の詳細な説明の記載の文面を特に主張として記載している点、特許法第七〇条に違反である。例えば被上告人らの主張は本件特許発明を製造方法の発明と無理にでっち上げて発明の詳細な説明の欄の記載である内の文章内の「接着剤を加圧し除電繊維群の周囲を包むようにとの文面を根に持って接着剤の流動性のある内に加圧することと決め付けてこれを主体としているがこれらは本件特許発明の技術的範囲外である、被上告人はこれに対し、対抗するため初めて平成四年八月四日付疎甲第一三号証として「アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五」を提出したものである。

二 アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五について

(1)アキレスノンスパーク製造説明書は刊行物として頒布されたものでもなく、公然と知られていない私文書でありこの製造説明書は証拠として価しない。

(2)接着剤の固化の意味は刊行物である(接着用語辞典)日本接着学会編、日刊工業新聞社発行の六九頁一三~一四頁に

「溶剤や分散媒体の揮発により固体化する場合は固化とよばれる」

(3)固体の意味は(角川国語中辞典)七五二頁二欄に

「固相にある物体、一定の容積を持ち、流動性を示さず、力を加えても変形しにくい」

(4)固着の意味は(角川国語中辞典)七五四頁三欄に

「しっかりくっついて離れぬこと」

三 アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の記載文と被上告人らの製品とは相違している点

(一)接着剤を塗布し固化し両者を固着している。

(1)アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至三において共通している製造工程(3)に

「配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤を固化させて電極1と電極固定用テープ2を固着する。」

故に接着剤3を固化し電極(除電繊維群と同一)1と電極固定用テープ2とは固着していることである。

(2)同物件目録四においては製造工程(3)に

「配列した後、金属板7と電極1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し、接着剤3を固化させて、電極1と金属板7とを固着する。」

これは前記電極固定用テープ2を金属板7に置き換えたものであり、金属板7と電極1とは接着剤を固化し両者を固着しているものである。

(3)同物件目録五においては製造工程(3)に

「配列した後、金風板7と電極1の上から溶剤(これは溶剤系接着剤と思われる)を塗布し固化した接着剤3と電極1に浸透され接着剤を再活性化して両者を接着し、再びこれを乾燥固化する」

これは前記物件目録四とほぼ同様でただ接着剤を再活性化し金属板7と電極1とを接着剤を固化し両者を固着する意味である。

(4)故に物件目録一乃至五の製造工程(3)において電極1と電極固定用テープ(材質はアルミテープ)2又は金属板7とは接着剤3を固化し両者を固着していることをアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)で決定している。

(二)電極固定用テープ2と電極配列用シート4又は金属板7とは粘着剤で一時的接着で後で両者を簡単に剥離できる構造である。

(1)物件目録一の製造工程(1)乃至(5)により製造された自己放電式除電器より、製造工程(6)の(C)において「使用時には電極配列用シート4を剥がして用いる。」と記載されている。

電極配列用シート4と電極固定用粘着テープ2とは剥離しやすいように電極固定用粘着テープの粘着剤を利用して両者を一時的接着している。

(2)物件目録二は製造工程(1)乃至(4)により製造された中間製品より製造工程(5)に「電極配列用シート4を剥がし所定形状の金属製カセットの内側に電極固定用粘着テープ2の粘着面を貼りつけたのちカセット6を折り曲げて締付け完成品とする」

電極配列用シート4と電極固定用粘着テープとは剥離しやすいように電極固定用粘着テープの粘着剤を利用して両者を一時的接着している。

(3)物件目録三は製造工程(1)乃至(5)により製造された中間製品より製造工程(6)で「ひとつづつ裁断したものの電極配列用シート4を剥がし金属板7に貼りつける」

電極配列用シート4と電極固定用粘着テープ2とは剥離しやすいように電極固定用粘着テープの粘着剤を利用して両者を一時的接着している。

(4)物件目録四は製造工程(1)乃至(5)により製造された中間製品より製造工程(6)で「ひとつづつ裁断したものの電極配列用シート4と両面テープ8を外す。」

電極固定用粘着テープ2の粘着剤を利用して一時的に接着してある電極配列用シート4と両面粘着テープ8の粘着剤で一時的接着している両面粘着テープ8等を簡単に剥離できるようにしてある。

(5)物件目録五は製造工程(1)乃至(5)により製造された中間製品より製造工程(6)で「ひとつづつ裁断したものの電極配列用シート4と両面粘着テープ8を外す」

電極固定用粘着テープ2の粘着剤を利用して一時的接着してある電極配列用シート4と両面粘着テープ8の粘着剤で一時的接着している両面粘着テープ8等を簡単に剥離できるようにしてある。

(6)以上の物件目録一乃至五の製造工程においていづれも製品又は中間製品より電極配列用シート等を剥離しやすいように粘着剤を使用して一時的接着し、電極配列用シート等を簡単に剥離することが被控訴人の製造工程の目的である。

(三)前記三の(一)及び(二)を総合したアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五は

電極(除電繊維群)1と直接接触している電極固定用テープ2又は金属板7等とは接着剤を塗布し、固化し、両者間を固着する。又電極固定用テープ2より電極配列用シート等は簡単に剥離することができることが主体である。

四 被控訴人らの製品はアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)で両者を固着すること等実際に製造している製造方法とは完全に相違している点

(一)平成五年一〇月二二日東京地方裁判所待合室において、当時の被告及び被告代理人(現控訴人及び控訴代理人)等立会の上当時の原告(現被控訴人)代理人がアキレスノンスパークの代表的である中間製品の検甲第三号証(写一の一)の電極配列用シート5の下部の一部を左手で持ち、この除電繊維群1の七束をまとめて右手でつまみ、これを電極固定用テープ2の三本分だけいとも簡単に剥したのちこれを上部に捲き上げ、最初の電極固定用テープより剥した部分をアルミ粘着テープで上部に固定したものが検甲第三号証写一の一上部写真(全景)下部はこの一部拡大写真である。

この写真を良く見ると、

アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五製造工程において除電繊維群(電極)1と電極固定用テープ2又は金属板7とは接着剤を固化し両者がしっかりくっついて離れなく固着していることを製造工程(3)に明記してあるが被控訴人らの製品の代表的である検甲第三号証において、電極固定用テープ2と除電繊維群1とが、いとも簡単に剥離している。又電極固定用テープ2と電極配列用シート5とは簡単に剥離できるようにアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(5)又は(6)に明記してあるが、これが完全に接着し固着したままである実態が被上告人らが製造した完成品にして市販している現物であり、アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程の記載とは完全に正反対であることは非常におかしな現象である。

アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の記載されているものは被控訴人らの実際製造している製造工程とは相違している。この記載により製造することができないものであり、これをさももつともらしく記載した単なる作文にすぎない。

(二)接着剤を塗布し固化して固体化したと記載されていることに対し信用できない実態

(1)アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)に電極(除電繊維群)1と電極周定用テープ2とは接着剤を塗布し接着剤を固化し両者を固着している中間製品の代表的である検甲第二号証の一部拡大写真(写三の一の下部の写真)である。

この写真をよく見ると電極固定用テープ2上に直角に一定間隔で除電繊維群1を配置し、この上に接着剤層3が電極固定用テープ2の巾員の上下に二本の接着剤層3があり、電極固定用テープ面にはその両サイドと二本の接着剤層間に接着剤の無い空間帯4と合計して三本ある。接着剤層3は製造工程(3)により接着剤は固化されて固体化して、流動性を示さず、力を加えても変形しにくいものである。この中間製品をカセット内に入れカセットの両外面を締付け完成品とした市販品を入手し、このカセットの一部を切り開いた写真が写三の二(第八物件)、写三の三(第一〇物件)である。この写真をよく見ると接着剤を固化し固体化して流動性を示さない、加圧しても変形しにくい接着剤層3の巾が極端に広がり、これにつれて接着剤層間の空間帯4がほとんど無い位等に変形していることは理論的に説明できない現象である。この現象を示したことは接着剤層の表面だけ皮膜が出来て内部に充分流動性のある接着剤がカセットの外面の加圧により流出して広がり接着しているものであることは云うまでもない。

アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)による接着剤を固化するという主張は実行していないウソであることを現物により証明されているものである。

(2)被上告人らの接着剤を固化する時点は平成五年七月一六日付当時原告の準備書面(二)の二頁一三行目より一四行目に

「ドラム上で電極固定用粘着テープにおいて順次接着剤を塗布し接着剤の乾燥固化をまつ」と記載されているため接着剤を固化する時点は中間製品にする前のドラム上であることが明確に記載されている。

ドラム上より取り外した中間製品は当然接着剤層は固化され固体化し流動性もなく粘性もなく、加圧しても変形しにくいものになった接着剤層である。

この中間製品を製品にするため下請先に出す直前検甲第四号証のビデオテープのコマ撮りの写真(写一二より写一七)で明白な通り右半分上部より下部に至る間赤外線ヒーターのついた熱風乾燥器内の上段、下段に各中間製品を重ねて入れて乾燥している。写一二においては上段の一番上の一枚だけの中間製品を裏かへしこの部分の接着剤層の乾燥状態を点検し、写一四においては接着剤層にティツシュベーバーを押し付け、これが付着するかどうか接着剤層の粘性の有無の点検を実施している。写一五では乾燥状態が良いので取り出している。写一六以後は今度下段の中間製品の点検に移っている。

以上のことを考慮してドラム上で接着剤層の固化し固体化したのをまって、ドラム上より取り外した中間製品を下請先に出す直前乾燥状態の点検を実施することはドラム上で接着剤の固化するをまつという準備書面に記載してあることは真実ではなく準備書面の信用性は大きく欠けていることが証明されている。

(3)被上告人らの製品全部に使用されている中間製品である検甲第二号証、検甲第三号証を製造する方法は

電極配列用シート4上に電極固定用粘着テープの粘着剤を利用して電極固定用テープを一定間隔に張り付けたものを回転するドラム上に取り付け、ドラムを回転しながら電極固定用テープに直角に除電繊維群を一定間隔で一定張力で捲きつけるため電極固定用テープ面に直接密着している除電繊維群との密着力は相当強力であり、手でこの密着している部分を少しでも引き開けることは困難である位の密着力であるこの電極固定用テープに沿って、ゴム系接着剤をボリエチレン等のような外壁が柔軟性のビン内に入れビンの口にノズルを取り付け、このノズルを下向にしビンの側壁を加圧しがら塗布するようなゴム系接着剤の濃度の接着剤を圧力を加えることなく塗布する。

圧力を加えることなくゴム系接着剤を塗布したこのゴム系接着剤の浸透力で電極固定用テープと強力に密着している除電繊維群との間を押し開けて侵入することは理論的にありえない、このため電極固定用テープと除電繊維群との強力に密着部分に接着剤が浸透していなかったため前記四の(一)に記載してある通り電極固定用テープより除電繊維群がいとも簡単に剥離したのである。しかも剥離した電極固定用テープ面には写一の三の4で明白な通り接着剤らしきものが皆無の状態であることにより証明されている。ドラム上で接着剤を固化したのち一定間隔で一定張力で捲きつけられ電極固定用テープ面と除電繊維群との密着力は強力であるがドラム上より取り外すとき捲きつけてあった多数列の除電繊維群の一か所で全部同時に切断したので除電繊維群の引張強度が急に零となり固化した接着剤はそのままの状態であり電極固定用テープと除電繊維群との密着力は小さくなった中間製品である。

この中間製品をカセットの内部に入れカセットの両外面より加圧して完成品にした市販品を入手して、このカセットの一部の断面をマイクロスコープ(微小部分を研究及びこの部分の写真を精密に正確に撮影することができるので多くの研究所で一番多く愛用されている装置である)によって撮影した写真が写四乃至写一一である。

この写真をよく見ると、電極固定用テープ面と除電繊維群との間に写一の三の4で接着剤らしきものがなかったところに明白に新しく接着剤層HH’H”が各写真共完全に出現している。この原因はドラム上で接着剤の内部まで完全に固化しておらず又下請先に出す直前熱風乾燥器で乾燥しても内部まで固化せず表面だけの皮膜だけが硬くなっていた接着剤層がカセットの両外面の加圧力で皮膜が破れ内部の流動部分が流出しこれが侵入して出来た接着剤層HH’H”であることは写四乃至写一一で証明されている。

故にドラム上で接着剤層は固化していないことが証明されていてアキレスノンスパーク製造説明書の製造工程の(3)の記載は実施していなくウソの記載であることを証明されたものである。

(4)平成四年一一月二日当時債権者(現被上告人)の準備書面一四頁一一行目より一五頁二行目に

「溶剤系の接着剤は固化するといってもゴムのようなものであり柔軟性や多少の粘性は残ることがあるのは常識である」と記載されている。

ゴム系接着剤の溶剤等が揮発して固化し固体化したものは完全なゴムになる。ゴムという物質は柔軟性はあるが粘性は皆無であることはその道の研究家又は一般人でも科学的知識のある人は周知である。

これに対して被控訴人らが多少の粘性があるのは常識であると云うのは粘性の意味を知らないのかようするにゴムに多少の粘性があるということはゴム系接着剤を固化し固体化していないことを証明しているものである。

第五 平成七年(ネ)第二二二九号不正競争行為差止請求控訴事件の判決(以下これを本判決と略記載する)について納得することができない点

一 本判決二頁後欄六行目より三頁六行目に

(一)「被控訴人がアキレスノンスパークという商品名で製造販売している自己放電式除電器の大部分を占める原告製品一乃至五のうち、原告製品一及び二は原判決添付の別紙物件目録一及び二の各二の(1)乃至(5)に記載の製造工程を、原告製品三乃至五は同目録三乃至五の各二の(1)乃至(6)に記載の製造工程をそれぞれ経て製造されたもので、いずれも右各二の(3)の工程で塗布乃至再活性化された接着剤を乾燥、固化させてから、その後の化粧用粘着テープを貼りつけたり、カセットでかしめたりする右各二の(4)以後の工程に移るものであること、右(3)の工程を経た後の接着剤は加圧しても多少の変形が生ずる程度の柔軟性はあるが、これを外部から加圧した場合は、流動して除電繊維群に浸透するほどの流動性は失っているものと認められる。」と記載されている。

(二)右文書中製造工程(3)及び(5)又は(6)等が被上告人の実際に製造している市販品の製造方法とは相違している点

(1)被上告人の製造工程(3)で接着剤を固化させて電極1と電極固定用テープ2とは固着したという、

(2)ところが、前記第四の四の(一)に詳細に記載してある通り被控訴人らの製品に使用している代表的な中間製品である電極配列用シートの一部を左手で持ち、除電繊維群を右手でつまみいとも簡単に剥した時、固着している、製造工程(3)に明記してあるところがいとも簡単に剥離し、又製造工程(5)又は(6)に記載してある電極配列用シート5と電極固定用テープ2とは簡単に剥れやすく粘着剤を使用しているところが製造工程(3)で両者を固着しているものよりはるかに硬く接着している現状について明らかに製品の製造工程とアキレスノンスパークの製造工程とは相違しており、この製造工程では実際の製品を製造することが不可能であることが証明されている。

製造工程(3)と被上告人の製品とは無関係であり実施していないウソの主張であることが証明されている。

(3)被上告人らの接着剤を固化する時点は平成五年七月一六日付当時原告の準備書面(二)の二頁一三行目より一四行目に

「ドラム上で電極固定用粘着テープに沿って順次接着剤を塗布し接着剤の乾燥固化をまつ」と記載されているため接着剤を固化する時点は中間製品にする前のドラム上であることが明確に記載されている。

ドラム上より取り外した中間製品は当然接着剤層は固化され固体化し流動性もなく粘性もなく、加圧して変形しにくいものになった接着剤層である。

この中間製品を製品にするため下請先に出す直前検甲第四号証のビデオテープのコマ撮りの写真(写一二より写一七)で明白な通り右半分上部より下部に至る間赤外線ヒーターのついた熱風乾燥器内の上段、下段に各中間製品を重ねて入れて乾燥している。写一二においては上段の一番上の一枚だけ中間製品を裏返ししこの部分を接着剤層の乾燥状態を点検し、写一四においては接着剤層にティシュベーバーを押し付け、これが付着するかどうかの接着剤層の粘性の有無の点検を実施している。写一五では乾燥状態が良いので取り出している。写一六は今度下段の中間製品の点検に移っている。

以上のことを考慮して、ドラム上で接着剤層の固化し固体化したのをまって、ドラム上より取り外した中間製品を下請先に出す直前乾燥状態の点検を実施することはドラム上で接着剤の固化することを実施していないことを証明されていて準備書面に記載してあるドラム上で接着剤の固化するをまってまつという準備書面に記載してあることは真赤なウソであり準備書面の信用性は大きく欠けて相違していることが証明されている。

(4)平成四年一一月二日当時債権者(現被上告人)の準備書面一四頁一一行目より一五頁二行目に

「溶剤系の接着剤は固化するといってもゴムのようなものであり柔軟性や多少の粘性は残ることがあるのは常識である」と記載されている。

ゴム系接着剤の溶剤等が揮発して固化し固体化したものは完全なゴムになる。ゴムどいう物質は柔軟性はあるが粘性は皆無であることはその道の研究家又は一般人でも科学的知識のある人は常識である。

これに対して被上告人らが多少の粘性があるのは常識であると云うのは粘性の意味を知らないのか、ようするにゴムに多少の粘性があるということはゴム系接着剤を固化し固体化していないことを証明しているものである。

(三)右文章中外部より加圧した場合流動性は充分にある点

(1)被上告人らの製品にも使用されている中間製品を作るためドラムを回転しながら電極固定用テープ面に除電繊維群を一定間隔に一定張力で捲いてあるため電極固定用テープと除電繊維群との両者間の密着度は相当強力であり、両者間の強力に密着している除電繊維群を手でつまみこの密着部分に透き間を作ることはまづ不可能である。この上にポリエチレン等柔軟性のあるビン内にゴム系接着剤を入れビンの口にノズルをつけ、このノズルを下向にし、ビンの側壁を加圧し流出させるような濃度のゴム系接着剤を圧力を加えることなく電極固定用テープに沿って塗布した接着剤の浸透力で前記強力に密着している部分を押し開けて侵入することは理論的にありえない。この証拠として前記第四の四の(一)に記載してあるようにいとも簡単に剥離したものである又剥離した電極固定用面には接着剤らしきものが皆無であった(写一の三の4を参照)。

このようなものをドラム上で接着剤を固化し固体化してから、多数回捲いてある除電繊維群を一個所で全数同時に切断してドラム上より取り外したのが中間製品でこの代表するものが検甲第二号証、検甲第三号証である。この中間製品はドラム上で除電繊維群を切断する前は電極固定用テープと除電繊維群との密着度は強力であったものがドラム上より取り外すとき多数回捲いてある除電繊維群の一個所で全数を切断したので除電繊維群の引張強度が急に零となりこれにつれて両者間の密着度も弱小となる。この時接着剤は両者の密着部には無く、ただ塗布された時の固化した状態である。

この中間製品を使用しカセット内に入れカセットを締付けて完成品にした市販品を入手しこの断面をマイクロスコーブにより拡大した写真が平成八年三月一八日付控訴人提出した準備書面添付写真写四乃至写一一である。この写真をよく見ると前記電極固定用テープ2と除電繊維群1との間に接着剤らしきものが皆無であったところに新たに接着剤層HH’H”が全写真共同時に出現している。この現象は被控訴人らの主張している製造工程(3)による接着剤を固化し固体化しておらず、ただ接着剤層の表面だけ乾燥した皮膜だけの中間製品をカセット内に入れカセットの外面を加圧したことにより接着剤層内部の流動性のある部分が流出して新たに出現し出来た接着剤層であることは明白である。

故に被上告人らの実際に製造し市販しているものを製造していること、物件目録一乃至五の製造工程(3)とは相違していて無関係なものである、物件目録の製造工程(3)はウソの主張であることは明白である。

(2)接着剤を塗布し固化し固体化したと記載されていることに対しまだ充分に流動性がある点

アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)に電極(除電繊維群)1と電極固定用テープ2とは接着剤を塗布し接着剤を固化し両者を固着している中間製品の代表的である検甲第二号証の一部拡大写真(写三の一の下部の写真)である。

この写真をよく見ると、電極固定用テープ2上に直角に一定間隔で除電繊維群1を配置し、この上に接着剤層3が電極固定用テープ2の巾員の上下に二本の接着剤層3があり、電極固定用テープ面にはその両サイドと二本の接着剤層3は製造工程(3)により接着剤は固化されて固体化して、流動性を示さず、力を加えても変形しにくいものである。この中間製品をカセット内に入れカセットの両外面を締付け完成品とした市販品を入手しこのカセットの一部を切り開いた写真が写三の二(第八物件)、写三の三(第一〇物件)である。この写真をよく見ると接着剤を固化し固体化して流動性を示さない、加圧しても変形しにくい接着剤層3の巾が極端に広がり接着しておりこれにつれて接着剤層間の空間帯4がほとんど無い位〈4〉い等に変形していることは理論的に説明できない現象である。この現象を示したことは接着剤層の表面だけ乾燥した皮膜が出来て内部に充分流動性のある接着剤がカセットの外面の加圧により流出して広がり接着しているものであることは云うまでもない。

アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)による接着剤を固化するという主張は実行していないウソである。接着剤層の内部は充分に流動性のあることを証明されているものである。

二 本判決四頁五行目より四頁後欄一行目に

(1)除電繊維群が電極固定用粘着テープに接着されるまで剥離されるか、化粧用粘着テープに接着された状態で剥離されるかは、電極固定用粘着テープと除電繊維群の上から塗布された接着剤と化粧用粘着テープの粘着剤との各固定力(接着力、粘着力)の相関関係に因るものと解されるから、仮に控訴人らが入手した原告製品の中に除電繊維群が化粧用粘着テープに接着された状態で剥離したものか存在したからといって、上告人らの前記主張を根拠づけるものとは認められない」と記載されている。

(2)右文章による解釈は一般的にありうちのことと思われるが、ここでは本件特許発明と争点であるアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五に共通している製造工程(3)「配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極1の上から溶剤系接着剤3を塗布し漫透、乾燥し接着剤を固化させて電極1と電極固定用テープ2とを固着すると記載されている。又製造工程(5)又は(6)では粘着剤を使用して接着した電極固定用粘着テープの粘着剤を使用して電極配列用シートに接着したものは後から剥離することが目的である。

故にこれらを総合すると接着剤で接着したものは永久接着で両者を固着することが目的であるが粘着剤で一時的接着した電極固定用テープと電極配列用シートとの接着は後で簡単に剥離することが目的である。故に接着剤で両者を固着したものの方が粘着剤で一時的に接着した方より接着剤で接着した方が各固定力(接着力、粘着力)が強力であることはアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程記載において証明される。

これに対して裁判所では上告人らの前記主張を根拠づけるものとは認められないとの判決に対し控訴人は納得することができない。

三 本判決四頁後欄一行目より八行目に

(1) 原告製品において除電繊維群の上から接着剤を塗布、乾燥させた後に化粧用粘着テープをその上に貼りつけた際にその粘着力によって化粧用粘着テープが密着したような場合には除電繊維群が存在することによるそれらの痕跡(凹凸)が化粧用粘着テープに付く可能性は十分にあるから、化粧用粘着テープの除電繊維群に面した側に除電繊維群に相当する痕跡があることを持って接着剤が流動性を喪失する前に加圧されたものであることを裏付けるものとは認められないと記載されている。

(2) ドラム上で電極固定用テープに沿って除電繊維群の上よりゴム系接着剤を圧力を加えることなく塗布し接着剤を固化したとすればこの上に化粧用粘着テープの粘着剤を使用して手圧で接着した時化粧用テープの表面に固化した接着剤層の形状の痕跡が出現するのが当然であるが除電繊維群に相似する痕跡があることは、接着剤層が固化していなくただ表面だけに乾燥した皮膜があり内部には充分流動性がある接着剤層の上に化粧用粘着テープの粘着剤を使用して手圧で貼りつけた時の圧力で接着剤層のほとんどが他の所(除電繊維群の無い部分)と電極固定用テープと電極との間に流入し接着剤層HH’H”が出現したので除電繊維群の上部に塗布した接着剤がほとんど他に移動したので、この部分には接着剤が無いため除電繊維に相似した痕跡だけが出現したのであり、接着剤を固化していない証拠である。

故に接着剤の流動性を喪失する前に加圧されたものであることを裏付けるものと認められないとの判決に対し控訴人は納得することができない。

(3) 接着剤が流動性を喪失する前に加圧したことを詳細に説明したものが前記第五の(三)の(1)及び(2)にも記載されている。

四 本判決四頁後欄九行目より五頁八行目に

(1) 「マイクロスコープで控訴人らが収集した原告製品一に対応する原告製品の断面を二五〇倍に拡大した写真である乙第一〇号証添付写真1によれば、除電繊維群からなる電極の上面に存する、電極と化粧用粘着テープとの間の接着剤の層の厚みは、電極の存しない部分における接着剤の層の厚みと比較して相当薄いことが認められるが、電極の上面から流動性のある接着剤を塗布すれば、接着剤は電極の上面を頂点としてその両側に移動して電極をくるむような状態となり、必ずしも電極の上面に接着剤が相当の厚みを持って固化するとは限らないから、電極と化粧用粘着テープとの間の接着剤の層の厚みが薄いことをもって、接着剤が流動性を喪失する前に加圧したことを裏付けるものとは認められない」と記載されている。

(2) ボリエチレン等柔軟性のビン内にゴム系接着剤を入れこのビンの口にノズルをつけ、このノズルを下向きにし、ビンの側壁を加圧しなければ流出しないような濃度のゴム系接着剤を圧力を加えることなく塗布したものは接着剤を固化されるまで塗布した時の形状を保っているものでこの状態のまま固化されるものである、これに対しこの上に化粧用テープを貼り付け手圧した時は固化された接着剤層の形状の厚みのあるものが化粧用テープ上に出現するはずであるがこれが薄く変形した現象は接着剤がドラム上で固化しておらず接着剤の表面だけの皮膜が乾燥し内部に充分流動性のある部分が流出したので乾燥した皮膜の部分が電極と化粧用テープとの間に薄い層となっているものである。

(3) 前記の濃度のゴム系接着剤を圧力を加えることなく塗布したものが電極と電極固定用テープと接触している両サイドH”との部分に接着剤が入るわけがないにもかかわらず完全に侵入している接着剤が出現していることは化粧用テープ上の手圧により流動性部分の接着剤が流入して出来たことは云うまでもない。

故に接着剤が流動性のある内に加圧したことの証明である。

(4) これに対し裁判所で「接着剤が流動性を喪失する前に加圧したことは裏付けるものとは認められない」の判決に対し控訴人は納得することができない。

五 本判決五頁八行目より後欄の五行目に

(1) 「かえって、右写真1によれば、化粧用粘着テープと電極固定用粘着テープが除電繊維群を介することなく、接着剤のみを介して接している部分についても、相当の厚さの固化した接着剤の層が存在していることが認められているところ、接着剤が流動性を有する時点で加圧したとすれば、接着剤の層は相当薄いものになるであろうと考えられるから、右のように相当の厚さの固化した接着剤の層が存在することは、接着剤が塗布、乾燥された後に化粧用粘着テープが接着剤層の上に貼付されたものであることを裏付けるものということができる」と記載されている。

(2) ゴム系接着剤をボリエチレン等のビンの側壁を加圧しながら圧力を加えることなく塗布した接着剤層の厚さは各所ほぼ同等である、この接着剤層の表面だけの皮膜の上に化粧用テープを手圧で貼り付けた時電極(除電繊維群)の上部が他の部分より高いので早く加圧されるので、この部分の接着剤が除電繊維群と除電繊維群との間に押し込められ移動するので塗布した時の接着剤層の厚みより厚くなるのは当然のことであり、このように接着剤層が除電繊維群の上部は薄くなり除電繊維群間の部分は厚くなりしかも除電繊維群と電極固定用テープとの接触している除電繊維群の両サイドに新しく接着剤が出現していることは化粧用テープ面を加圧している時は接着剤に充分流動性があった内であることを写真1で証明されている。

手圧のときは指先の面積が除電繊維群間より広いので除電繊維群の間には直接圧を加えることはできないのでこの部分の接着剤層の厚みは塗布したときより厚くなっている。

(3) 裁判所の判決に対し上告人は納得することはできない。

六 本判決五頁後欄六行目より六頁二行目に

(1) 「そして右乙第一〇号証添付写真1のほか、マイクロスコープで控訴人らの収集した原告製品一に対する原告製品の断面を二五〇倍に拡大した写真、原告製品二に対する原告製品の断面を五〇倍及び二五〇倍に拡大した写真(乙第一〇号証添付写真2、3、乙第一二号証添付写真4乃至11、乙第一九号証添付写真6)によっても原告製品において、化粧用粘着テープを手で貼る際の圧力又はプレスによる圧力によって、除電繊維群と柔性板でくるむように包み、接着剤を浸透させた上で固化していることを認めることはできない」と記載されている。

(2) 電極配列用シート上に電極固定用粘着テープの粘着剤を利用して一定間隔に貼り付けたものを回転するドラム上に取り付けドラム上を回転しながら除電繊維群を一定間隔で一定張力で多数列巻つける(この時電極固定用テープ面と除電繊維群との密着力は相当強力なものであり除電繊維群の一本を手でつまみ両者の密着部を引張ってもほとんど変化が無い位の密着力である)これをドラムを停止し電極固定用テープに沿って除電繊維群の上を含めてゴム系接着剤をボリエチレン等のビン内に入れビンの口にノズルをつけ、このノズルを下向にしビンの側壁に加圧しノズルにより出す濃度のゴム系接着剤を圧力を加えることなく塗布する(この時塗布した接着剤層の厚みは除電繊維群の上及び他の部分共ほとんど同様な厚みのものであり、かつ強力に密着している部分には接着剤は浸透せず固化しているものである)これをドラム上で固化するをまってから、ドラム上より取り外すため多数列に強力に巻つけられている除電繊維群の全多数列を一個所で同時に切断する(この時強力に引張られていた除電繊維群の引張り強度は急に零となり、これにつれて電極固定用テープと除電繊維群の密着度も弱小となる、接着剤層の固化されたまま前記と同形である)。このドラムより取り外した中間製品を被控訴人の大部分の製品に使用する。

この中間製品の接着剤層の上に化粧用粘着テープの粘着剤を利用し手圧をかけ貼り付る又はカセット内に入れてプレスにより加圧して完成品にする、この時ゴム系接着剤が固化しゴムになっていれば手圧したテープタイプの化粧用テープを貼ったり又はカセットの一部を切り開いて、化粧用テープの接着力を無くし、又カセットの加圧力を無くすればゴムになった接着剤層は中間製品の時の形状にほぼ同形に復帰するものである。

ところが、この市販品を入手してこの一部の断面拡大をマイクロスコープを使用して撮影した写真(乙第一〇号証添付写真2、3、乙第一三号証添付写真4乃至11、乙第一九号証添付写真6)をよく見ると、電極固定用テープと除電繊維群との接触面に接着剤が浸透することなく固化してあった所に接着剤が侵入し新たに接着剤層HH’H”全写真共同様に出現している、又除電繊維群の上面も他と同様な厚みのあるべき固化した接着剤の厚みが非常に薄く又除電繊維群のない部分の接着剤層の塗布した時の厚みが他の部分より流動し移動した接着剤が増加し厚くなる等変形している。

この現象は被控訴人の主張しているドラム上で接着剤の固化をまつという主張はウソであり、接着剤層の表面の皮膜が乾燥しているだけで内部は充分に流動性があるものをドラム上で多数列に巻付てある除電繊維群の一ヶ所を全数を同時に切断しドラム上より取り外した中間製品の電極固定用テープと除電繊維群との密着力が弱小な中間製品を使用し、この上に化粧用テープを手圧で取付る時又はカセット内に入れカセットの外面にプレスで加圧した時接着剤層内部の流動性部分が皮膜を破れ流出したものが電極固定用テレプ面と除電繊維群の密着力が弱小となった部分に侵入して新しく接着剤層HH’H”が出現しかつ柔性板の作用により各部分の接着剤層の圧力を平均にするため除電繊維群の一部分をくるむように変形している。

故に被控訴人の接着剤を塗布し加圧し終わるまでは接着剤層内には充分流動性がある内に加圧作業を実施したことは証明される。

七 本判決六頁後欄の九行目より一一行目に

(1) 「検甲第三号証及び検甲第三号証の剥離された除電繊維群を顕微鏡で拡大撮影した甲第一二号証によれば、剥離した除電繊維群の背面には、接着剤が薄い層となって存在していることが認められた」と記載されている。

(2) 右文章内の顕微鏡で拡大撮影したについて不合理な点がある。

「顕微鏡は微小物体を拡大して見る装置で倍率は百倍から二千倍程度」と角川国語中辞典(昭和八年一二月二〇日初版発行)の六七四頁にある顕微鏡で撮影した写真は微小物体の極小範囲の拡大であるため、この写真は非常に微小範囲しか写出しない。

甲第一二号証の現物である中個製品の電極固定用テープの巾は約一〇ミリメートルである。この電極固定用テープ巾が甲第一二号証の添付写真においては約六〇ミリメートルで約六倍に拡大しているにすぎない。

このように倍率が小さく、かつ甲第一二号証の写真のように画面が広範囲な写真は顕微鏡では撮影することは不可能である、ことはその道の技術者間では常識である。これを被上告人が準備書面に記載していることは非科学的な人間であり、このようなものは一般人に対する証拠物件にはならない。

裁判所の判決にこのような非科学的な被上告人の主張を真に受けて証拠として記載してあることに対し上告人は納得することができない。

(3) 右文章中「甲第一二号証によれば剥離した除電繊維群の背面には接着剤が薄い層となって存在していることが認められ」と記載してある。この認めた証拠として記載した理由は多分当時原告の平成六年七月二一日付準備書面(八)の七頁五行目に「検甲第三号証の電極固定用テープから剥した除電繊維群の裏面(テープ面に直接接していた面)には光沢が視認される。これはごく薄く接着剤が浸透していたことを示すものであるが石山には見えないようである」と記載している。当時原告はごく薄い接着剤が浸透していたからと記載されているが、接着剤があろうがなかろうが光沢の発生には無関係である。この理由として原告が平成六年一一月三〇日に提出した甲第一二号証を複写した写真(平成八年三月一八日付当時被告の準備書面に添付した甲第一二号証の写真)をよく見ると、原告が薄い接着剤があるため光沢が視認されるというところの写真の除電繊維群間に黄色の接着剤層のあるこの下部の左側1に光沢が視認されている。又黄色の接着剤層より離れた上部になるところ(ここには接着剤層があると除電効果を大きく阻害するので皆無なところ)の除電繊維群自体の部分2にも光沢が視認している。被上告人の光沢があるから薄い接着剤層があるという主張は理論的に合致しないウソの主張である。この部分には接着剤は無いことが証明されている。

(4) この証拠にもならない非科学的で実際と合わない被控訴人の主張を何故そのまま信用して認められたという判決に対し上告人は納得することができない。

八 本判決六頁後欄一一行目より七頁五行目に

(1) 「接着剤の薄い層となって存在していることが認められ、これによれば検甲第三号証の右剥離部分は除電繊維群と電極固定用粘着テープとの間に接着剤が浸透していたところ、除電繊維群を電極固定用粘着テープから剥離した際、右の浸透していた接着剤が除電繊維群に付着したまま、電極固定用粘着テープから剥されたものと認められるから控訴人らの右主張は採用できない。」と記載されている。

甲第一二号証で前記詳細に説明したように除電繊維群と電極固定用テープとの間に薄い接着剤があるという証拠は成り立ない。又アキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)による両者を固着すると主張されている製造工程を裁判所で認めておきながら、これに反して、電極固定用テープと除電繊維群とがいとも簡単に剥離されたことに対し被控訴人の製造工程である接着剤を固化し両者を固着するという製造工程(3)を実施していない架空の主張であるものを、裁判所ではここで認めている判決の記載である。

控訴人の主張である、いとも簡単に剥離したところについて写一の三の4で明白な通り除電繊維群をいとも簡単に剥したあとの電極固定用テープ面4に接着剤らしきものが皆無であることは電極固定用テープと除電繊維群とが密着していたところには接着剤が浸透していないことを写真(写一の三の4)で証明されている。この中間製品をカセット内に入れてカセットの外面をプレスで加圧し完成品を市販しているものを入手し、この一部の断面拡大写真を各研究所で愛用しているマイクロスコープで撮影した写真(写四乃至写一一)である。この写真をよく見ると全写真共共通して、電極固定用テープと除電繊維群との間に新しく接着剤層HHHが出現していることは明白である。このような現象は被控訴人の主張しているドラム上で接着剤を固化し電極固定用テープと除電繊維群を接着剤を塗布し固化させ両音を固着させるという製造工程(3)を全々実施しておらず、ウソの主張であることがバクロしたものである。もしもドラム上で接着剤を固化し固体化した中間製品を使用し手圧又はプレス等で加圧した完成品では加圧後固化し固体化したゴムが新たに接着剤層HH’H”が出来ることは科学的にありえないものであり、これが出来た理由はドラム上又はこれ以後において接着剤を学問的に云う固化し固体化せず接着剤層の内部に充分流動性があることを前記写真により証明されている。

(2) 以上の記載及び前記七の(3)の甲第一二号証の光沢による薄い接着剤層の有無の証拠にならない又前記八の(1)に記載してある通り被上告人の製造工程(3)により電極固定用テープと除電繊維群とが固着すると主張しているものが除電繊維群に接着剤が付着したまま電極固定用テープから剥されたものと認められるとのように被控訴人の主張と正反対に対し裁判所では上告人らの右主張は採用できないという判決に対し上告人は納得することができない。

九 本判決二頁よりの記載されている事項を省略して記載すると。

(1) 前記1の記載はアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)による「配列した後、電極固定用粘着テープ2と電極(除電繊維群)1の上から溶剤系の接着剤3を塗布、浸透、乾燥し接着剤3を固化させて電極1と電極固定用粘着テープ2とを固着する。」又製造工程(5)又は(6)においては「中間製品より製品にする時電極配列用シートを剥離する、又は自己放電式除電器を取付ける時電極配列用シートを剥離する」等の製造工程による電極1と電極固定用テープ2とを接着剤を塗布し固化させて両者を固着させ剥離しないようにする。又電極配列用シートは電極固定用テープから簡単に剥れるよう粘着剤を使用し一次的接着している中間製品である。

(2) ところが、平成五年一〇月二二日東京地方裁判所待合室において被控訴人代理人がこの代表的中間製品で検甲第三号証の電極配列用シート4の一部を左手で持ち、電極(除電繊維群)1の端を右手でつまみいとも簡単に剥離した、その時の結果として、製造工程(3)で電極1と電極固定用テープとはしっかりと離れないように固着しているところがいとも簡単に剥離した。又簡単に剥離するように粘着剤で接着している電極配列用シート4と電極固定用テープ2とは固着している結果であった。

この原因は固着する接着剤の固化を実施していないためこの接着力より一次的接着のため使用した粘着剤の方が接着力が大きかったことを明白にしているものであり被上告人の製造工程(3)による接着剤を固化するということは全々実施していないことを代表的である検甲第三号証の中間製品により証明されたものである。

故に製造工程(3)及び(5)又は(6)と実際の被控訴人の製品とは相違することが明白である。

一〇 本判決七頁六行目より八行目に

(1) 「(五)乙第一一号証、乙第一三号証乃至乙第一五号証、乙第一七号証乃至乙第一九号証のうち前記1の認定に反する部分はいずれもたやすく信用できず、他に前記1の認定を左右するに足りる証拠はない」と記載されている。

(2)乙第一一号証は被上告人の製品の市販品を入手し、この断面を各研究所で愛用しているマイクロスコープを使用して拡大した写真である、これについて写一の三の4により電極固定用テープ面より除電繊維群を剥したあとの電極固定用テープ面には接着剤らしきものが皆無であった、この中間製品を使用して、この上に化粧用粘着テープをこの粘着剤を使用して手圧により接着する。又はカセット内に入れてカセットの外面を加圧して完成品にした断面拡大写真(写四乃至写一一)の八種類全部が全部共同様に電極固定用テープと除電繊維群との接触部に接着剤が浸透して接着剤層が新たに出現している(HH’H”)ことは接着剤を製造工程(3)や固化するという主張はウソであり接着剤層の内部に充分流動性のある内に加圧したことの証明されたものであり被控訴人の製造工程の主張と実際製品を製造している工程とは相違していることは明白であり、接着剤を固化していないので前記1を大きく反論するものである。

(3)乙第一三号証は被上告人の製造し市販品を入手したものの断面をマイクロスコープにより拡大写真(写四より写一一)であり、いづれも製造工程(3)で接着剤を固化し固体化となり流動性を示さない接着剤層である中間製品に化粧用粘着テープの粘着を利用し接着のため手圧で加圧し、又はカセット内に入れカセットの外面をプレスにより加圧等により固化したという接着剤層の内部の流動性部分が流動して、前記接着剤らしきものが無かったところに新しく接着剤層HH’H”が出現する等の原因は接着剤を固化しておらず接着剤層の内部に流動性が充分存在しているためでありこのような製品の製造方法と被控訴人の主張しているアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)とは完全に相違していることが証明されているものであり前記1の判決を大きく反論するものである。

(4)乙第一四号証は長年接着剤を使用し研究している専門家である今藤先生が平成五年八月三日東京高等裁判所閲覧室で被控訴人の中間製品を見分した時、加圧時において接着剤層は、この表面だけの皮膜だけ乾燥したものに加圧した時この接着剤層の表面の皮膜が破れ内部の流動性部分が流出し移動したものであることを確認した、被控訴人の実際に製造している製品と物件目録一乃至五の製造工程とは相違していることが明白である。故に前記1の判決を大きく反論するものである。

(5)乙第一五号証は平成五年七月二九日二原告が製造した中間製品として東京高等裁判所に提出した疎検甲第一号証の現物について、この右側最初の除電繊維群が一束だけが取り去られていたところの面にはアルミニューム面が完全に露出し接着剤がなかったことにより、除電繊維群と電極固定用テープとの密着していた部分には接着剤が浸透していないことを証明されている。

この中間製品を使用して製造し完成品の断面拡大写真において電極固定用テープ2と除電繊維群1との強力に密着している間に接着剤3が浸透し接着剤層ができている。又電極固定用テープ2に塗布してある接着剤2が全長に渡り一定の厚みに塗布してあるものを完成品にし、この断面拡大写真においては高い所の除電繊維群の上部の接着剤層の厚さが薄くなりこの部分の接着剤が他に移動してその部分の接着剤層が厚くなっている等接着剤層の内部の流動性部分が流出し移動して接着している。接着剤を固化して固体化し流動性を示さないものは加圧しても被接着体に浸透し接着効果を発揮することはない。カセットタイプの断面拡大写真(写四乃至写八)の物件の断面拡大写真においては接着剤が電極固定用テープと除電繊維群との間に浸透し接着剤層が新たに出現したり又除電繊維群の周囲の一部をくるむように柔性板と共に変形している。この現象は製造工程(3)による接着剤を固化していないためであり被控訴人が実際に製造している製品の製造工程と物件目録一乃至五の製造工程(3)とは相違していることは明白であり、前記1の判決を大きく反論するものである。

(6) 乙第一七号証においてドラム上で圧力を加えることなく塗布した接着剤を固化したのち、多数列に巻いてある除電繊維群を一ヶ所で全数同時に切断してドラム上より取り外した中間製品を使用し大部分の製品を作るため手圧又はプレスによる加圧等をかえる時はすでに接着剤は固化し固体化し流動性を示さない接着剤層である。

検甲第二号証(写三の一上は全面、下は一部拡大写真)で電極固定用テープ巾上に二本の固化したという接着剤層間に接着剤の無い空間帯4を作った、接着剤層の中間製品をカセット内に入れカセットの外面を加圧して完成品である市販品のカセットの一部を切り開いた写真(写三の二)第八物件(写三の三)第一〇物件等をよく見ると、二本の固化したと主張している接着剤層をの巾が極端に広い巾となり、この中間製品にあった空間帯の巾はほとんど無い位になっている。この理由は接着剤層を製造工程で固化したと主張していることは実際の製造している製品の製造工程とは相違することを現物により証明されているものであり、前記1の判決を大きく反論するところである。

(7) 乙第一八号証において被上告人の接着剤を固化する製造工程(3)に主張の記載、又準備書面や検甲第四号証ビデオテープ等により、被控訴人の製造工程では唯一の一番重要視している固化している工程を全々示さず、これをなぜ証拠物件として主張しているのか又裁判所でもこれを信用して取り上げていることに対し大きく上告人は納得することができない。

故に検甲第四号証ビデオテープのコマ取りの写七乃至写一二においてはドラム上で接着剤を固化したものを、ここで熱風乾燥器に中間製品を重ねたものを二段に入れ乾燥し写七において一番上の中間製品を裏返しし接着剤層の乾燥状態の点検又写九においてティシュペーパーを押し付け接着剤層の粘性の有無の点検をなぜ実施しなければならないのか、この理由として下請先に出す直前まで接着剤の乾燥を実施していないことを証明しているものであり、製造工程(3)の主張は実際に製造している製品の製造工程と相違することを明白にしているものであり、前記1の判決を大きく反論するところである。

(8) 乙第一九号証において、製造工程(3)で接着剤を固化し両者間を固着すると主張している又準備書面平成五年七月一六日付被控訴人の準備書面(二)の二頁に「ドラム上で接着剤を固化すること」主張し接着剤を固化する時点を明確に示してある。

この検甲第三号証の中間製品を平成五年一〇月二二日に東京地方裁判所待合室で電極配列用シートの一部を左手で持ち除電繊維の端末を右手でつまみいとも簡単に剥離した。この検甲第三号証の電極固定用テープと除電繊維群とは製造工程(3)により接着剤を固化し両者間をしっくりとくつついて離れないように固着している。又製造工程(5)又は(6)により電極配列用シートと電極固定用テープとは後で簡単に剥離するため粘着剤を使用して一時的接着をしているものである。これを前記いとも簡単に剥離した時固着している電極固定用テープと除電繊維とがいとも簡単に剥離し又簡単に剥離するため電極配列用シートと電極固定用テープとを粘着剤で一時的接着した方が完全に固着している。

この現象は製造工程(3)による接着剤を固化、又両者間を固着すると主張したことはウソであり実施しておちず接着剤展の内部には充分流動性があるため、粘着剤で接着したより接着力が弱いことである。接着剤を固化していないことについて前記1の判決を大きく反論するところである。

一一 以上乙第一一号証、乙第一三号証乃至乙第一五号証、乙第一七号証乃至乙第一九号証により、前記1の判決による接着剤を固化し両者間を固着するという製造工程(3)は実施しておらずただ文章上だけの主張で実際に製造している製品工程とは完全に相違していることをバクロした証拠物件であり前記1の認定を反する部分はいずれも重大である。被控訴人の現物の実際に製造している中間製品及び完成品を証拠として反論したものでこれらは全部信用性は大きく正確である。前記1の認定を左右するに充分なる証拠と思われるものに対して

これに対し裁判所の判決において「前記1の認定に反する部分はいずれもたやすく信用できず、他に前記1の認定を左右するに足りる証拠はない」とに対し上告人は納得することができない。

一二 本判決九頁一一行目より九頁後欄一行目に

(1) 「自社が本件特許出願当時すでに製造販売して公然実施していた「ノンスパークSS」について「本件特許出願当時すでに製造販売して公然実施していたと」いうことについて何も証拠となるものは皆無であること」を下記理由により明確である。

(2) 理由 被上告人が平成二年三月二〇日付特許庁に特許異議申立書の証明願いとして提出した甲第一号証、甲第二号証は秘密を保つ義務を有する者同志の書類であり公然ということにはならない。同添付の図面は印刷によって発行された公開的な性質を有する図面ではなく、手で書いたものを複写したものであり刊行物ではないので公然実施していたという証拠にはならない。

本件発明を出願したのは一九八〇年七月一〇日である被上告人が初めて刊行物としたカタログを発表したものは一九八二年一〇月一日である、本件発明の方が二年以上も早いものである。

一三 本判決一〇頁後欄二行目より四行目に

(1) 「本件発明は、『柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立った』という製造工程によって製造される自己放電式除電器であると記載されているが本件特許発明の技術的範囲として特許請求の範囲の記載は『柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立ったことを特徴とした自己放電式除電器』である。」

(2) 国文法上入れてのて、加圧してのて、組立ったのた等て、やた、の字があるものは過去完了である。

前記辞典の広辞苑及び角川国語中辞典等により「組立った」と過去完了の意味は「組立ったものの構造」と明記されているのであり、本件特許発明は「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧した構造の自己放電式除電器であり、物の発明の特許であり製造方法の特許ではないことは云うまでもない。

(3) 裁判所の文面で一〇頁後欄四行目に「製造される自己放電式除電器」と書き変へて本件特許発明を文書を変へて特に製造方法にする手段に対し控訴人は納得することができない。

一四 本判決一〇頁後欄一一行目より一一頁三行目に

(1) 「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧して組立った」という製造工程により製造された物として特定される自己放電式除電器を技術範囲とするものであることは明らかである」と記載されている。

(2) 本件特許発明の技術的範囲は全部文法上過去完了の文面で記載されている「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面より加圧したことを特徴とした自己放電式除電器」であり広辞苑や角川国語中辞典で「組立ったものの構造」と記載されているので

本件特許発明は「柔性板と金属板との間に除電繊維群と接着剤とを入れて柔性板の外面を加圧したことを特徴とした構造の自己放電式除電器」そのものの技術的範囲の発明である。

一五 本判決一一頁後欄九行目より一二頁一行目に

(1) 「接着剤を浸透させた後、これを乾燥、固化させて接着剤の流動性が失われて電極固定用粘着テープ又は金属板と電極が接着された後に、原判決添付の別紙物件目録一乃至五の各二(4)以後の工程が行われているものと認められる」

(2) 前記文章中「固化させてと流動性が失われて」とあるが前記第五(三)の(2)に詳記してある通り検甲第二号証の一部拡大写真(写三の一の下部)で電極固定用テープ面上に二本の固化した接着剤層とこの間に接着剤の無い空間帯があるこの中間製品をカセット内に入れてカセットの外面を加圧して完成品の市販品を入手しこのカセットの一部を切り開いた写真が写三の二と写三の三であるこの写真をよく見ると二本の固化したという接着剤層が二本共極端に巾が広がりこれにつれて二本の接着剤層の間にあった空間帯の巾がほとんど無い位に変形している、この原因は固化したと製造工程(3)に記載してあるものが接着剤の表面だけの皮膜が乾燥し内部は充分に流動性のある部分がカセットの外面の加圧力で皮膜を破り流動性の部分が流出し接着したもので巾が特に広くなりこれにつれて空間部が無い位になった、故に接着剤の固化する製造工程(3)は実際に製造している製品の製造工程とは相違することを又流動性があること等明白にされたものである。このようにアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五の製造工程(3)と実際の製品の製造工程とは大きく相違する点があるものを裁判所ではそのまま信用されて判決にするのか控訴人は納得することができない。

一六 本判決一二頁後欄二行目より六行目に

(1) 「控訴人らは、原告製品はいずれも接着剤がまだ柔軟性を有している時点において、手により直接あるいはプレス作業により金属板を介して間接的にそれぞれ力を加えて加圧し、これらによって除電繊維群を柔性板でくるむように包み接着剤を浸透固化させている旨主張するが採用できない」

(2) 右文章中「接着剤がまだ柔軟性を有している時点において」とあるが以上詳細に説明してある通り柔軟性どころではなく接着剤層の内部に充分流動性のある時点である。又「接着剤を固化させて」とあるが接着剤を固化させる工程も全々記載されておらず被控訴人の製品を分解しても又被控訴人の準備書面記載により又は検甲第四号証のビデオテープ等においても接着剤を固化していることを信用出来るだけの証拠になるものはない。

裁判所では以上の説明に対し何故採用できないのか控訴人は納得することができない。

一七 本判決一二頁後欄七行目より一三頁二行目に

(1) 「以上によれば、原告製品は本件発明の技術的範囲に属しないものと認められるから競争関係にある控訴人らが『原告製品が本件特許権を侵害する』旨の書面の配布及び口頭での陳述をすることは被控訴人の営業上の信用を容する虚偽の事実の告知、流布に当たるものと認められる。よって被控訴人の本訴請求はいずれも理由がありこれを認容した原判決は相当であって、控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとし主文のとおり判決する。

(2) 右文章中「原告製品は本件発明の技術的範囲に属しないものと認められる」と記載されているが

被控訴人の製品の大部分の製造はアキレスノンスパーク製造説明書物件目録一乃至五である、この内目録一及び三乃至五の構造は本件特許発明の構造の部品名は異なるものもあるが作用効果上においては同等であり被控訴人はただ本件特許発明を無理に製造方法の発明と決め付け被控訴人の製造方法は接着剤層を固化したのち化粧用テープ(本件の柔性板に作用効果上該当する)を取付るから異なると主張し裁判所でも何故この被上告人を信用してか製造工程と決めつけているが本件特許発明は技術的範囲の文章が文法上過去完了による辞典によっても構造であることを証明されているため又被上告人の主張している固化の製造工程も被控訴人の実際に製造している完成品等の断面拡大写真及び中間製品も製品にした時接着剤層は充分に流動性があることがバクロしたため接着剤を固化する工程を実施していないこととなったので本件特許発明の構造と同一であることであり又物件目録二は金属板を曲げてカセットにしただけであり本件特許発明を利用したものであり上告人の許諾を受けなければ実施することができない旨特許法第七二条に明記してある。

故に被上告人の製品大部分である物件目録一乃至五は本件特許発明を侵害しているものである、これに対して裁判所ではこのように大部分が侵害しているものを本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとしこれに対し上告人は納得することができない。

以上

(物件目録一ないし五省略)

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